2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「民主主義の非西洋起源」グレーバー

グレーバーはイロコイ部族連合や海賊船の事例を出してハンティントン的「西洋的伝統」の優位性を相対化してみるが、「ヨーロッパ諸国が勢力を拡大し、大西洋システムが全世界を包み込んでいくにつれて、地球規模の影響力を持つものはすべて、それら各国の首…

「アウシュヴィッツのコーヒー」臼井隆一郎

筆者はナチスのユダヤ人絶滅政策をゲルマニア帝国の延長として捉えており、ドイツ領東アフリカで起きたマジマジ反乱の鎮圧にその先行事例を見出している。 一方でナチスが参考にしたゲルマニア帝国という目標を設定し「総力戦」の概念を形にしたルーデンドル…

「言語の牢獄」ジェイムソン

ジェイムソンはソシュール、フォルマリズムの「共時・通時の対比」を経て構造主義の批判に至る。 言語の牢獄とは「構造分析が対象言語の位に移り、それがもっと複雑な体系に吸収され今度はその体系がそれを説明する(p219)」というメタ言語の「無限の構…

「時代病」吉本隆明・高岡健

高岡は上野千鶴子の授業で女子生徒全員が性的被害があると手を挙げたことに関して実際の被害経験ではなくバーチャルリアリティの被害なのだと断定するが、だとするならばなぜバーチャルな場ではなく現実の場において手を挙げて告白しているのか。バーチャル…

「経済的理性の狂気」ハーヴェイ

ハーヴェイはマルクスが「資本論」で示唆した方法、系統的論述によって資本の内的運動法則を分析する手法に批判的検証を加えている。ハーヴェイによればマルクスは価値生産を重視しすぎており、価値実現(流通)や分配(利子生み資本の優位性)への言及が不…

「コスモポリタニズム」ハーヴェイ

ハーヴェイはマーサ・ヌスバウムが提唱するコスモポリタン的教育体系(p28)には地理学的理論が不可欠な一部として組み込まれなければならない(p493)とする。 カントが明示的に論じたように地理学と人間学はすべての知識の可能性の条件だからである…

「日の名残り」カズオ・イシグロ

執事スティーブンスにとってファラディに受けそうなジョークの練習とはミス・ケントンとの間に築くことが出来なかった「人間的な温かさ(p296)」を作りだす試みといえる。執事としての仕事と捉える点にスティーブンスの性質が現れている。 婚約の申し出を…

「コミュニズムの仮説」バディウ

バディウによればコミュニズムの理念とは「彼自身の家から遠く離れた場所、日常の規則化された生活様式のパラメーターとは遠く隔たった、例えばマリ人の労働者の宿泊所、あるいは工場の入り口などに連れて行く(p205)」という類いの「真理の場所を決定す…

「真昼の盗人のように」ジジェク

ジジェクはリベラリズムをシステムを変えずにシステムを批判していると批判する。 特にやり玉に挙げられているのはアイデンティティポリティクスだろう。ジジェクはミートゥー運動はロザラム事件のような貧困白人女性を狙ったパキスタン系のギャングを問題視…