「民主主義の非西洋起源」グレーバー

グレーバーはイロコイ部族連合や海賊船の事例を出してハンティントン的「西洋的伝統」の優位性を相対化してみるが、「ヨーロッパ諸国が勢力を拡大し、大西洋システムが全世界を包み込んでいくにつれて、地球規模の影響力を持つものはすべて、それら各国の首都に集められてそこで混ざり合い、やがて「西洋的」伝統としてしられるようになる伝統の内部に吸収されてしまった(p90)」というとき「吸収」する伝統としての西洋の優位性が新たに立ち上がっている。

マルセル・モースをマルクスに対置させて「物々交換に基づく社会がこれまでに実在したということを信じられるだけの理由がない(p147)」と述べるが、グレーバーやモースが賛美するエキゾチックな「贈与経済」も手放した「物」の多寡によって「勝利者」という名誉が与えられるのであれば物々交換を高度に発展させた市場における顕示的消費と本質的には何も変わらないのである。