2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

テクノロジーが介する性関係

トランス女性をレズビアン女性が受け入れないという「滑りやすい坂」議論は社会的性関係と個人的性関係の混同であるが、トランス女性に対する差別の根底にあるのは性事実(セックス)による性意識(ジェンダー)の搾取である。性の想像力を性の事実が搾取する構…

言語にとって美とはなにか

形式主義論争を無意味と評し内容と形式を自己表出で簡単につないでしまうが、吉本自身も認めているように言語の能率化は自己表出を歪ませ幻想性として抽出している以上その隔たりは表現にも影を差しているとみるべきだ。 沈黙と記号に分裂してしまった言語を…

夏の花 原民喜

妻の墓参りと原爆が「名称を知らない」夏の花として対比されている。 しかし原爆投下の際、語り手は便所にいて暗闇が滑り落ちる経験をしたが原爆の花は見ていない。妻の墓参りに持っていく花を「黄色の小さな花弁の可憐な野趣」と表現しているのとは対照的で…

歯車 芥川龍之介

「歯車」の本質は反復による自己表出の拡散・消失といえる。スウェーデン人の白黒のネクタイと出版社に依頼された日本人女性の白黒の印象、姉の夫=レエンコオトの幽霊と私と帝劇で目撃された私の間で起きる二重の反復は姉の夫の轢死=作家の死の予兆として…

規範化の結果

規範化は時間的秩序による抑圧であるが生活空間の拡張が行われた結果でもある。 規範化の表出経路に関係なく社会の流動化は時間的な秩序によって制御できるようなものではない。 時間的な秩序そのものが旧社会の発展の総体として捉えられず取捨選択を行い現…

金融自由化と社会の右傾化

1996年に橋本内閣が金融ビッグバンを提唱し98年に金融監督庁が分離される。93年に定期性預金、94年に流動性預金の金利が自由化され臨時金利調整法以来の金利規制が撤廃される。以降、外部資金調達における直接金融の割合は増え続けている。 この下…

結果としての選挙

選挙は原因ではなく結果である。政党や政治家が議席をどの程度獲得できるかは選挙以前の政治活動〈後援会活動・候補者選び・利益分配〉によって決まる。選挙によって政治が変わるのではなく政治が変わった結果として選挙で議席数が変動するのだ。 たとえば有…

情動の社会学 伊藤守

反原発の情動が尖閣問題の情動に取って代わられた原因やプロセスについて十分に語られていない。問題は情動的解釈項の違いがどこにあるかである。 同じく意識的知覚だと言ってしまうと、反原発の命題よりも尖閣問題の命題の方が情動的事実として優先度が高い…

星々の荒野から ティプトリー・ジュニア

ティプトリー・ジュニアの作家性は男性の暴力に虐げられる女性を通じた生命否定にある。 この作家は多産性に対する人類の自己嫌悪こそが女性に対する暴力の原因であるとし、嫌悪感にたびたび同調する。多すぎる人口が生態系に与える破壊は登場人物を悲惨な結…