結果としての選挙

選挙は原因ではなく結果である。政党や政治家が議席をどの程度獲得できるかは選挙以前の政治活動〈後援会活動・候補者選び・利益分配〉によって決まる。選挙によって政治が変わるのではなく政治が変わった結果として選挙で議席数が変動するのだ。

たとえば有権者は候補者の政策よりも彼の人柄が信用できるかどうかを見て投票する。政党組織は信用度の高い候補者を有権者に供給できた時、対価としての票を得る。自民党議員の4割が世襲議員であるのは彼らが後援団体にとって信用できる存在であるからに他ならない。

有権者はみずから候補者を選んで投票しているつもりでも、権力が設定する信用と投票の交換法則によって投票させられているに過ぎないのである。テレビのCMで見た商品を買ってしまう消費者はCMの供給によって商品の需要を喚起されているのと同様である。

有権者が候補者に求める信用とは何か。権力行使の熟練度である。野党の政治家が与党以上の票を得ることが出来ないのは政策の悪いからではなく、権力行使の熟練度が不十分であるからにほかならない。有権者の票に相当する信用を供給できていないのだ。

もし野党側の権力行使の熟練度が高まれば政権交代は起きるが、彼らの熟練した権力行使は既存の権力構造に組み込まれるだろう。〈政権交代の前年は平成で最も上場企業の倒産件数が多く年金記録問題も進行中の年だったため自民党の信用度が低下した結果、民主党の権力行使の熟練度が相対的に高くなり政権交代が実現した。民主党がTPPや基地移設、消費税において権力行使の方向性を自民党と同じくしたのは周知の事実である。〉

要するに選挙によって権力構造そのものを変えるのは無理である。

権力構造を変えるには社会の物量を増やし交換様式を変更するしかない。