入管法改正案は技術革新までの時間稼ぎ

参議院入管法の改正案が議論されている。論点は特定技能で在留する外国人の役割だ。政府側が主張する人手不足や生産性の低さの問題は今に始まったことではない。1989年の1.57ショックの時から少子化や労働力不足はずっと懸念されてきた。少子化対策という言葉をニュースで頻繁に聞くようになって久しいが現在の出生率は1989年を下回り待機児童が6万7千も人いるのが現状である。少子化を解決するには保育や高等教育への公的支援を増やすだけではなく子育て世代や独身者、貧困世帯の所得を増やす政策が必要だが逆進性が大きい消費税を上げようとする政府は逆の方向に向かっているようだ。

自分が思うに政府は人口減少を解決する気がないのである。今非正規などの低賃金の職にある層が家庭を持ったり再教育を受けたりする機会はそもそも非正規雇用を技術革新で代替するなら不要だろう。問題は方法論ではなく、労働をテクノロジーで全て代替しようという方針が正しくない事なのだ。

今回の入管法にしても政府は技能実習と特定技能1号(実習の発展版)は永住権取得の就労期間に含まないという。10年間日本に住んで仕事をしても永住することは出来ない。今回の制度は国際的な「移民」の基準すら大きく下回るだろう。目的が技術革新までの時間稼ぎなら移民労働者であっても永住させる必要はないという考えが見て取れる。

日経新聞世論調査によれば反対は47%で賛成より若干多く、高齢者ほど反対意見に傾くらしい。山下法務大臣外国人労働者に対して日本人と同等もしくはそれ以上の待遇で受け入れるというが日本人の労働水準が悪化すれば移民労働者の待遇も同じく悪化している、そしてこれから悪化していくとすれば移民を排斥しようというレイシストにある種の正当性を与えてしまうだろう。移民が嫌いだというのは全く同意できないが移民を日本の労働環境で酷使させてはならないという主張は今の野党であれば共感するだろうし世論も移民反対の方が多いのである。

こうして日本の移民議論は再びねじれている。