「空震」スローターダイク(03年7月)

「空気の申し子」としての人間は後見人として「雲」を持っていた。「雲」とは地表において生命の存続を可能にするため、太陽の短波のエネルギーが長波の赤外線として反射されるのを防い水蒸気と温室効果ガスである。1919年4月22日にドイツ軍が使用した塩素ガスの毒ガス兵器「毒雲」は人間の「呼吸」に対するテロリズムであり、誰にでも開かれていた空気が「デザイン」され世界に「呼吸不可能なゾーン」が作られたことを意味する。テロ、偶像破壊、科学によって大気の潜在性が破壊された後の社会は化学戦争の情報学的類似体として統合を行う。311後のメディア状況は非軍事的=市民的なコミュニケーションが実のところ「知的に呼吸不可能なゾーン」であったことを暴露する。このような抑制解除メディアが閉じられた空間としての大衆妄想を煽動する。ダイビングスーツを着たダリがスピーチをしようとして呼吸困難に陥った時はスーツの外に呼吸する大気があったが、大気そのものが「エア・デザイン」されたダイビングスーツ(閉鎖空間)と化した場合、ダリと同じ立場におかれた人間は窒息するしかないだろう。