「魔の木」スローターダイク

主人公のヤン・ファン・ライデンは心理学を志しウィーンからビュザンシーまで旅をするがピュイゼギュール侯爵の動物磁気療法を受けている最中にフランス革命に遭遇する。フランス革命=人工的な夢遊状態としてファン・ライデンが経験した新しい流体理論は彼が経験した革命の実在性を疑わしいものにしている。ピュイゼギュールが治療中に「あなたのかりそめの人生をそろそろ返すべき時じゃないですか」とライデンに問うとき、「魔の木」という物語も終盤を迎えるのである。サン=マルボーやド・スポンティのような社会心霊主義の視点からフランス革命に至る現実政治に批判的な登場人物がフランス革命で敵視された「貴族」であるのは象徴的である。嘔吐しファン・ライデンに介抱されるマルトが別の芝居を演じているのと同様にファン・ライデンも心理学に魅了される若者を演じているのではないか。最後にローゼンコッツの診察を行うのはその自身の役割すら傍観的であるために本当に終わりがない。