寡婦控除を認めない家族観

税制改正大綱見直しに向けた自公の調整が進んでいるという報道。自動車税については一定の合意が出来たようだが公明党が求める寡婦控除の導入は自民党が反発している。反対理由として「婚姻にもとづく家族観が損なわれる」からだという。母子世帯の過半数が貧困ラインを下回る現状を家族観を理由に放置するのは、母子家庭の貧困が離婚した事の懲罰だからだろう。経済的に不利な母子が離婚したことのデメリットをすべて背負い込む不条理は今の社会を象徴している。貧困による脅しで維持される家族観とは「損なわれる」べき価値等なく、家父の頭の中以外には存在しないと考えた方が良いだろう。

離婚の理由の5分の1は夫の妻に対する暴力である。一方で養育費は4分の1しか支払われていない。3組が結婚すると同時に1組が離婚している。これが結婚と離婚の実態である。生涯未婚率がかつてなく高くなったのも単に所得が低下しただけではなく、結婚や家族に対する幻想が崩れたからではないか。男性は所得に比例して有配偶率が高くなるが女性は逆である。高所得の女性は結婚のリスクを回避する傾向がある。低所得の女性は自らの生活をかなえるために望まない結婚を「自由意志」で選択せざるをえない。

家族が幻想としても現実としても崩壊した。もはや市場や共同体が家族を代替できるとは思わない。自民党改憲草案では「家族は互いに助け合わなければならない」と国民に命じているが家族を作ること自体が困難であれば家族を作れなくなった社会は争い合うしかないだろう。