富豪がベーシックインカムに賛成する理由

マーク・ザッカーバーグやリチャード・ブランソンがベーシックインカムに賛成するのは「優秀な」資本家として利潤率の低下を懸念しているからである。つまり失業者や低所得者のためを思って賛成しているわけではない。可変資本に対する不変資本の割合が大きくなると利潤率は低下する。オートメーション化が進んだ結果労働者数が減少し自然利子率がマイナスになった日本がいい例である。

AI、ドローン、自動レジ等によって労働力〈可変資本〉が生産設備〈不変資本〉に取って代わられる時、可変資本とともに企業が成長し続けるために必要な剰余価値の割合も小さくなってしまう。

技術革新を続けながら資本主義が永続的に成長するためには失われた可変資本分の所得を労働とは別に補填しなければならない。「優れた」資本家の現状認識は正しいが、資本主義が永続的である彼らの前提は間違っている。

ベーシックインカムを導入する際に問われる観点は、財政的に可能かどうかではなく資本主義を「永続」させるのが不可能である以上、資本主義とは異なる制御の方法としてベーシックインカムが技術的に可能かどうかである。

実質利子率がマイナスになり物価上昇がほぼゼロの日本において導入の下地は整っているように思うし、資本主義の「永続性」の限界を知る意味でも実験の価値はあるだろう。