北朝鮮漁船の「違法」操業は日本政府の国際法違反

海上保安庁の巡視船が北朝鮮の漁船と接触し破損したとの報道がある。日本の排他的経済水域内での出来事と言う事で排外主義にとっては格好のニュースだが、そもそも排他的経済水域とは「主権的権利」であり日本の主権ではない。主権的権利は海洋資源を保存・開発するための経済目的の権利である。

また国連海洋法62条によれば沿岸国は漁獲可能量の余剰分は他の国による漁獲を認めなければならないと記載されており、日本政府は1996年にこの条約を批准している(北朝鮮は未批准)。よって国際法違反は日本の水産庁であり海上保安庁なのである。

問題はなぜ巡視船破損というニュースが今報道されているかである。今臨時国会で成立した漁業法改正が背景にあることは間違いない。地元の優先権は廃止し企業参入を容易にする「規制緩和」の目くらましに北朝鮮の「違法」操業を報道というわけだ。この点から見ても70年ぶりの漁業法改正がいかなる改悪かが想像できる。

日本の漁業問題の本質は北朝鮮云々ではなく、深刻な高齢化である。漁業従事者の3人の1人が高齢者で半数が後継者がいないという。今や日本は魚介類の半分を海外から輸入している。世界6位の海洋大国がこのありさまになったのには、日本政府の第一次産業軽視が地方の疲弊を招いているからに他ならない。

北朝鮮が違法操業しているからスルメイカの漁獲量が減ってしまうという認識は、日本が漁獲可能量を満たしうるだけの活発な漁業産業が存在しているという幻想を伴っている。しかし現実にある漁業の疲弊はそのように悪質な報道(プロパガンダ)では決して解決しないだろう。