心的現象論 吉本隆明

幽霊のような静けさによって心的な世界はすべての事象と結び付けうるというが、逆もまた然りである。

吉本が言うように現実の世界が心像に有形・有声として関与できないのであれば、一般夢が民族や言語によって異なる多様性を説明できない。

自己妄想によって心的世界と現実世界を接続しているのであれば、関係づけによって存在できるのは心的世界や人間だけではなく、世界の客観性であっても良いはずである。

とはいえこの接続において心的世界の優位は揺らいでいないように見える。

この社会の自我の弱さは無意識の強さであるが、調整原理としての超自我の確立を阻んでいる。心的な優位はこの特異な状況の一時的な結果である。