レーダー照射事件にみるアメリカの存在意義

韓国の駆逐艦がレーダーを自衛隊の哨戒機に照射したとされる事件が連日報道されている。防衛省はレーダーの照射があったと主張し韓国はなかったと否定しているので水掛け論だ。哨戒機が記録したとされる火器管制レーダーの周波数を提示しなければレーダー照射の直接的な証拠とはならないだろう。防衛省が周波数の記録を機密保持の観点から公表しないのであればアメリカの電子偵察衛星「ELINT」が全世界のレーダーの情報を集めているため、問題解決のためアメリカを頼る必要がある。つまりアメリカは子供の喧嘩を諫める親の役割を担う。

日本と韓国には米軍が駐留しており日本と韓国に経費負担義務がある。日韓関係以前にそれぞれの対米関係を見直すべきだと思うが、レーダー照射事件のように当事者間で解決できない問題が出てくると仲裁してくれる父親〈アメリカ〉が子どもたち〈日韓〉には必要ということだ。東アジアに介入するには日韓が対立関係にある方がアメリカとっては好ましいのだ。在日米軍関係費8000億円はいつも面倒を見てくれる父親に対する思いやりと感謝というわけだ。これでは到底主権国家とは言えない。

日韓関係がここまで険悪化したのは徴用工、慰安婦問題を見ても1965年の日韓基本条約に始まる。基本条約締結に至ったのはアメリカのベトナム戦争が長期化したからに他ならない。防衛省がレーダー照射事件を大本営発表プロパガンダとして利用している以上、問題は歴史認識の違いだけではない。先に述べたアメリカの分断統治としての日韓問題を現実的利害の側から捉える必要があるのだろう。