増税に見る国家の破綻

2019年度予算案によれば過去最高の税収だという。62.5兆円だから18年59.1兆円よりも3.4兆円税収が増えた。みずほ総研の試算では8%から10%の引き上げで5.4兆円増なので他で2.4兆円減税されている点は注意しなければならない。富裕層への減税と低所得者への増税が同時に行われ、消費税の引き上げ分が圧縮されている不可解さが今回の消費増税の本質である。

今回を除いて税収が一番多かったのは1990年の60.1兆円だが今とは税収の内訳が大きく異なる。90~17年の間に消費税収が3.8倍になる一方、法人税収は33%、所得税収は27%減少している。逆進性が高い消費税を上げ累進性の大きな法人・所得税を下げた結果何が得られたのだろうか?GDP比253%という膨大な政府債務である。

政府の長期債務残高は1990年の265兆円から17年には1107兆円と4倍になった。G7の中で債務残高、財政赤字の割合ともに日本がトップである。今回赤字国債の発行を1兆円削減するらしいが赤字国債の方が国債費より大きい事実は何も変わらない。

これは企業や富裕層を減税すれば財政が成り立たないほど格差が拡大した事を示している。全体の所得や消費が減っている現状で消費税など「広く浅く」課税しても増大する社会保障費を満たす税収が得られないことは小学生が考えても分かる理屈である。今現在、日本企業は過去最高の経常利益を上げ90年に比べれば4倍近い利益を上げているにも関わらず法人税収は6兆円も減少している。内部留保の440兆円は企業減税の結果である。

国民の三大義務の中で納税の義務のみが罰則を伴う正真正銘の義務である。つまり徴税権は国家にとって最も重要な権限と言える。企業の国際競争やら生産性の向上やらのために徴税機能が不全に陥っている現状はもはや国家が再配分のための装置ではなく資本家や富裕層を優遇し庶民を抑圧するための道具になり下がったことを意味する。

自分たちは国家がなくなった現実を今の財政の不均衡に見ている。国家がない時代には新しい統治機構が必要になる。