マクロン以後のフランス

11月の中旬からフランスで大規模なデモが相次いでいる。燃料税の引き上げが原因だと言うが車をひっくり返したり店を襲撃したりする行為はその程度の理由だけでは説明できない。中継を見てみると確かに催涙弾を投げ返したりしてはいるが、大多数が普通の一般市民に見える。黄色いベストとカッスール(壊し屋)は違うというがどちらもネットやテレビで集まった不満層である点では一致しているので外見的にも内実的にも区別は困難だ。統一したスローガンや目的、組織はなく、そのためにフランス政府も対応に苦慮しているという。

なぜデモが起きたのか。失業率の高さ、富裕層への減税、そして今回の環境増税は個々に見ていけばフランスだけではなく日本でも同じ状況であるし、他の国々でも「国際競争」の下同じような政策がとられているのだろう。自分は日本もフランスのようにデモを起こすべきだと言いたいのではなく、各国は同じような状況にありながらその抗議の形態が多様である事を見るべきと考えている。日本ではその抗議は目に見えにくいが投票率の低下や排外主義の進展、デフレの長期化に現れていると思う。どの国や地域も、政策の重点に再配分が含まれる余地はほとんどないゆえに社会福祉を巡る弱者同士の争いが生まれている点は共通している。

去年のフランス大統領選でも有効投票率が66%だった。3人に1人は選挙にいかないか白票や無効票を投じている。元々決選投票の時点においてすらマクロンは国民の過半数に支持されていないのであるからこのようなデモが起きるのは必然であり重要だと考えるが候補者はマクロン以外にはルペンしかいなかった。つまりマクロン拒否は弱者同士の対立を激化する方向に行きつく可能性が高い。アメリカやブラジル、ハンガリーで起きている事が近い将来フランスやドイツでも起きた場合、EUは致命的な影響を受け存続したとしてもその役割は縮小せざるを得ない。

マクロン以後が問題になっているが、その展望が見えない場合人々はルペンに引き寄せられるほかない。それでもルペンはあり得ないという消極的な態度は決選投票でマクロンを選ばせた一方、4人に1人をルペンに投票させた。この二つの立場は共犯関係にあると言っていいだろう。