「自立の思想的根拠」吉本隆明

「どんな指導の言葉も明日を保障されるための根拠を持っていない」というが、何の根拠を持たない事に強度が出てきたらこのようなシニカルな言葉すらも空回りする。今どんな嘘でも直情的な言葉の方が好まれるのはシニカルな姿勢にすらシニカルになっている大衆の底知れない絶望があるからだろう。こういう絶望こそが「根深い現実的根拠」となっている。

虚像で虚像を打つというが国家が自然宗教の幻想が現世に下り思想的強力を持つものなら虚像どころか実像でも難しいのではないか。国家を虚像として否定できると考えてしまうところにもまた願望があるのだ。

階級闘争と平和共存は並立しないにしてもその矛盾を単なる知識人の錯誤としてしまうには戦後と呼ばれた73年間はあまりに長い。