「日本のナショナリズム」吉本隆明

著者によれば大衆のナショナリズムはすでに失われているので天皇イデオロギーを鏡として利用しなければ自分の姿を見ることができない。天皇制に依存している大衆がなぜ否定的媒介として権力を超えることが出来るのか。知識人はどちらも天皇を過大評価したと批判しているが大衆の組織的な力を過小評価している。人間が大衆の自覚をもったからこそ天皇制の枠内で利用されうるのである。

井の中の蛙は井の外に虚像を作らなければ井の外と繋がっているというが井の中で外を想像することなく生きる蛙は井の中こそが世界だという虚像を作っているのがこのことわざの本来の意味である。コミンテルン国家社会主義者の虚像が基本的に同じ認識に基づくと主張するのであれば、大衆の自立という思想も行きつくところは結局知識人の虚像に過ぎない。